国際原子力機関(IAEA)の定例理事会で…
国際原子力機関(IAEA)の定例理事会で、天野之弥事務局長の12月からの3期目続投が承認された(正式には9月の年次総会で決定)。核の安全管理、平和利用が世界の最重要課題の一つになる中、日本人トップの働きに大いに期待したい。
天野氏は元外交官で、長く核軍縮・不拡散問題に関わり、2009年から同職。この間、イランや北朝鮮の核問題への精力的な姿勢で評価された。
今回も「原子力の安全を高める取り組みで各国を支援していく」と語り、原子力技術を途上国の発展に活用していく重要性を指摘した。アジア、中東、アフリカ各国が、次々と原子力発電所建設に意欲を見せており、重要な使命だ。
原子力の平和利用は1953年、国連総会におけるアイゼンハワー米大統領の「平和のための原子力」の演説に始まった。原発の主流、軽水炉の開発などはその成果の一つだ。
しかし冷戦が進む中、米国は、核の平和利用で長期的なビジョンを示したり、研究開発の広がりに理解を示したりする余裕もなくなっていった。プルトニウム問題を中心に安全保障面での議論だけが進んだ。
それもあって今日、原子力の平和利用をめぐっては、世界的なネットワークが未整備だ。日本をはじめ西側各国の技術開発の相互協力や防災のための情報共有が進まない理由の一つだ。国際機関を中心に、原子力の夢と可能性について活発な議論が起こることを期待したい。