東京工業大は、ノーベル医学生理学賞を受賞…


 東京工業大は、ノーベル医学生理学賞を受賞した大隅良典栄誉教授(71)から寄付された1億円を基に「大隅良典記念基金」を設立した。当面は2018年に同大に入学する学生から、一定額の奨学金を支給する計画だ。

 今後、若手研究者や基礎研究への支援も検討する。インターネットなどを通じ、一般からの寄付も受け付ける予定だ。大隅さんは「次世代を担う若者がいかに元気かがその社会の未来を決める」と述べ、支援を呼び掛けた。東工大や大隅さんの教育再生への意気込みが伝わってくる。

 同様の基金には、02年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊東京大特別栄誉教授(90)が、03年に設立した「平成基礎科学財団」がある。理科教育で功績があった個人や団体に「小柴昌俊科学教育賞」を贈ったり、科学教室を100回以上開いたりしてきた。

 この間、財団の運営費は地方自治体や個人などからの賛助会費で賄ってきた。だが近年、退会者が増え自治体からの会費が減少。運営の見通しがつかなくなり、この3月末に解散することになった。

 日本では個人からの寄付が米国などに比べると少ないため、教育基金の維持は楽ではない。このため国家からの支援が薄くなると、若手研究者がそのしわ寄せをもろに受けてしまう。

 小柴財団が今後の基礎科学振興の在り方の先例を示したが、“二の矢”として放たれた「大隅良典記念基金」の果敢な挑戦に期待したい。