「大空の片隅にある冬日かな」(高浜虚子)…


 「大空の片隅にある冬日かな」(高浜虚子)。間もなく、一年の最後の月である12月を迎える。冬の日差しが辺りを静かに照らし、空気が澄み、空もどこか凍ったように見える。

 同じ青空でも、季節ごとにそれぞれ色合いが違うと感じる。秋に比べて冬の空は白く静寂に満ちた印象を受ける。春夏秋冬と季節が変わり、人も年齢を重ねていく。

 この当たり前のことがなぜか心に染み入る。中国唐時代の詩人は「年年歳歳花相似たり/歳歳年年人同じからず」と人生の無常を詠んでいる。自然は毎年同じでも、人は変わっていくのである。

 紅白歌合戦の出場歌手の発表があったが、常連だった和田アキ子さんや細川たかしさんらのベテランが落選し、その代わりに宇多田ヒカルさんらの新しい顔触れが選出された。これもまた「歳歳年年人同じからず」という点では、自然な世代交代になるのだろう。

 時代が変われば、人の顔触れも変わる。人間には寿命があるから、長い目で見れば変わるのが当然だろう。しかし、この交代は時にはスムーズにいかず、さまざまなトラブルや問題を引き起こしたりする。政治家や企業の経営者らの交代も例外ではない。

 その意味では、年の変わり目である年末近くになって、さまざまな感慨にふけるぐらいは平和なことなのかもしれない。もちろん、今年はまだ終わりではない。12月には大きなイベントであるクリスマスも控えている。