82歳の誕生日を迎えられた皇后陛下が、宮内庁…


 82歳の誕生日を迎えられた皇后陛下が、宮内庁記者会からの質問に文書で回答された。新聞各紙に御回答の全文が掲載されたが、中に気になる1点があった。

 皇后陛下は、新聞の1面で「生前退位」という活字を見られた時、大きな衝撃を受けられた、という。「歴史の書物の中でもこうした表現に接したことが一度もなかった」と述べておられる。

 その後、「私の感じ過ぎであったかもしれません」と付け加えておられる。要は、生前退位という言葉に違和感を覚えられた、ということだ。

 このような表現が間違っているわけではない。が、「生前」は「死後」と一対の語であって、生前退位という言葉を用いてほしくはない、という御心情は理解できる。

 天皇陛下が8月にお気持ちを表明される前に御意向を聞いていた人物によれば、陛下は「譲位」という言葉を使っておられた。皇后陛下が違和感を覚えられたのは、こうした事情もあるかもしれない。

 天皇陛下のお気持ち表明を受け、政府が設けた有識者会議では御公務の負担軽減などについて話し合う。来月に、石原信雄元官房副長官ら有識者16人から意見聴取を行う予定だ。譲位の是非についての議論が注目されがちだが、安倍晋三首相の言うように、予断なく審議を進めることが求められよう。陛下が御高齢であられることを踏まえ、御負担軽減の望ましい在り方について徹底的に論じ合ってほしい。