売れる商品に求められる技術レベルが向上し…


 売れる商品に求められる技術レベルが向上し、そのための開発競争が激烈になってきた。自動車はその典型で、最新技術がこれでもか、というほど詰め込まれている。

 消費者は技術の恩恵を受けることが多くなって、それはそれで喜ばしいことに違いない。一方、消費者の欲求を満たそうとする生産者側は四苦八苦である。

 スズキがトヨタ自動車に業務提携を申し入れた。世界的に強化が進む自動車の環境・安全技術や、普及が見込まれる自動運転技術の開発を単独で続けるには限界があると考え、トヨタの最新技術を活用して生き残りを図ろうとする戦略だ。

 もちろん先端技術開発に勤(いそ)しむトヨタ側も、その技術を採用し世界市場に展開する「仲間づくり」が勝ち残るためのキーワードの一つ。トヨタの技術を求めるスズキを陣営に迎え入れることは自然の流れだろう。

 提携の具体化はこれからだが、独占禁止法上の問題が生じる恐れもあるというから、どこまで踏み込んで成果を挙げられるか。ともかく国内の業界地図は、トヨタ、ホンダ、日産の3陣営に塗り替えられつつある。

 20年ほど前までは、先端工作機械や環境保全設備、新素材などの技術は、将来性ある事業分野として投資対象というレベルだった。しかし、自動車産業が急速にグローバル化する中で、これらの技術を集約する力が必要になった。産業界のパラダイムシフトと言えるかもしれない。