70年にわたり在位したタイのプミポン国王が…
70年にわたり在位したタイのプミポン国王が死去した。首都バンコクでは、多くの人が喪服で出勤し、国王が息を引き取った病院前の大通りの歩道は喪服姿の人々で埋め尽くされた。国王への敬愛の深さが、悲しみに表れている。
政治勢力の対立によって、どうしようもない状況に陥った時、国王は強力な仲裁者として統合の要となってきた。1992年、軍が民主化勢力を弾圧し流血事件となった時は、軍を後ろ盾とする首相と民主化運動のリーダーを正座させて叱りつけ、事態を収拾させた。
国民の絶大な信頼を背景にした威光がそれを可能にした。わが国皇室もタイ王室とは親密な交流を重ねてきた。2006年6月に行われたプミポン国王即位60周年の祝賀儀式には天皇皇后両陛下が列席されている。
互いに西洋の王室とは違った近しさがあるのではないか。西洋にも王室は多いが、東洋と西洋では国王と国民との関係は微妙に異なるものがあるようだ。
かつて日本では国民を天皇の赤子と言ったように、東洋ではその関係は親子関係に近いものがあると思われる。タイ国民の国王への追悼の広がりは、まさに国父を失った悲しみが背景にある。
子供は親の愛情に敏感である。国王が国民の親のような立場だとすれば、その国王が本当に国民のことを思っていたかどうかは、国民が一番知っているということになる。タイ国民の国王追悼の姿を見て思わされた。