「殺したがるばかども」と作家の瀬戸内寂聴氏が…
「殺したがるばかども」と作家の瀬戸内寂聴氏が発言した。「殺したがる」というのは、犯罪被害者遺族が加害者の死刑を望む、との意味だ。今月初めに福井市で開かれた日弁連の死刑廃止に関するシンポジウムの席上、ビデオメッセージの形で伝えられた。
もっとも「殺したがるばかども」とは、犯罪被害者の遺族や関係者を超えて、死刑制度存続を支持する一般国民も含むと言えよう。暴言もいろいろだが、被害者遺族を「ばか」呼ばわりするケースは極めて稀(まれ)だ。
一方、加害者側への言及は全くない。犯罪事実は無視して、とにかく死刑だけは許さない、との思考パターンだ。
数十年前の左翼知識人は、大方こんな感じだった。被害者のことはあらかじめ排除した上で、加害者だけを擁護する。時に加害者の側に酌(く)むべき事情があるのは当然だが、犯罪が正当化されてよいわけがない。
日本では8割の国民が死刑制度を支持している。半面、理由は不明だが、欧州諸国を中心に死刑廃止の動きが多く見られるのは事実のようだ。
欧州の事情がどうあれ、瀬戸内氏の発言が許されないことに変わりはない。なお、死刑廃止宣言を採択した日弁連は、この発言については謝罪している。死刑廃止に逆効果になるのを恐れたのだろう。それにしても普段、政治家の暴言には極度に神経質なメディアが、高名な作家の発言には妙に寛容なのが大変気になる。