「摘みもてる秋七草の手にあふれ」(杉原竹女)…


 「摘みもてる秋七草の手にあふれ」(杉原竹女)。9月は、歳時記では秋の項目に入る。残暑は厳しいが、このところの台風の到来で、秋が間近に迫っていることが感じられるのも確か。

 先日、所用で福島県いわき市から郡山市まで磐越東線で移動した。その途中、野山が少しずつ秋の気配を強めているのを感じた。草木が濃い緑からやや脱色し始めているような色合いだった。台風10号が日本列島に近づいている時だったので、なおさらそう見えたのかもしれない。

 台風はこのところ次々と発生している。台風の表記は昭和時代からのものでそう古くはなく、昔は主に「野分」や「大風」などと称していた。

 「猪もともに吹るゝ野分かな」(芭蕉)。台風という漢字を見ても意味がよく分からないが、野分からは野の草を分けるという具体的なイメージが浮かんでくる。「秋の疾風のことで、台風やその余波の風ともいえる。野の草を吹き分けるという意味である」(稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』)。

 秋の虫の声がセミの声に代わって耳に届くようになった。それが音楽のように快い。過ごしやすい季節になりつつあるという自然からの便りだからだろう。

 「秋の七草」というものがある。『ホトトギス新歳時記』によれば、もともとは「萩、尾花、葛の花、撫子、女郎花、藤袴、朝顔の花」だったが、今は「朝顔の代りに桔梗を入れている」となっている。