デジタルカメラは2000年以降、急速に普及し…


 デジタルカメラは2000年以降、急速に普及し、フィルムカメラを駆逐していった。その機能も日進月歩、改良を続けて、表現できる領域が極めて広くなった。

 山岳夜景を撮影してきた写真家の菊池哲男さんにとって、作品を一変させたのは07年に発売されたニコンD3と、翌年続けて発売されたD700、そして大口径超広角レンズ、ニッコール14-24㍉/F2・8Gだった。

 それによって暗い星までも止めたまま、写せるようになったという。08年に夜の山をテーマにした写真集『山の星月夜』(小学館)を刊行。ここに収められた作品によって菊池さんは山岳夜景の第一人者となった。

 そして今月、新たに『アルプス星夜』(山と渓谷社)を上梓(じょうし)。北アルプス全域を舞台に、山の風格や個性を重視し、春夏秋冬という季節感も念頭に置いて、日没から夜明けに至る風景を表現している。

 「月光射す冬の徳沢」はじめ、月や星の明かりで見る夜の山が、極めて神秘的で荘厳なものだということを感じさせてくれる。夜景を撮るためには、人々が休息する夜中に起きて活動しなければならない。

 それが菊池さん独自の山の登り方でもある。寝ないのは体に良くないのだが、チャンスに恵まれるとつい無理をする。夜を知ることによって朝の価値を実感するのだ。「アルプス星夜 菊池哲男写真展」が富士フイルムフォトサロン東京で8月19日から25日まで開催。きょうは山の日である。