音楽を通してスラム街に住む若者に夢を持たせようとした。…


 ブラジルのサンパウロ市で、スラム街に住む学生たちをメンバーに1996年に結成されたオーケストラがある。エリオポリス交響楽団で、指揮者のシルヴィオ・バカレリさんがバカレリ協会を設立してつくった楽団だ。

 音楽を通して若者に夢を持たせようとした。当初、練習できるスペースもなく屋外で練習していたが、その後、指揮者ズービン・メータさんが参加し、政府の支援も受けて大成功を収めた。

 オーケストラが誕生する時の出来事を映画化したのが、8月13日公開される「ストリート・オーケストラ」。先日、セルジオ・マシャード監督が来日し、製作のエピソードを聞くことができた。

 「ブラジルはさまざまな社会問題を抱えていますが、問題を提起するだけでなく、希望についての物語をつくりたかったのです」と同監督は動機を語る。スラム街で起きているのは、暴力、麻薬、貧困などの問題だ。

 主人公はバイオリニストのラエルチで、指揮者として赴任し、子供たちの教育に当たる。演じたのはブラジルの人気俳優ラザロ・ハーモスさん。バイオリンの特訓を4カ月間受けたという。

 映画で使われた音楽はエリオポリス交響楽団によるもの。加えてサンパウロ交響楽団と音楽監督マリン・オールソップさんも特別出演している。同交響楽団のスケジュールを押さえるのが一苦労だったが、オールソップさんの演技は最高だったと絶賛する。