「すき透るゼリーの中のさくらんぼ」…


 「すき透るゼリーの中のさくらんぼ」(小竹由岐子)。この季節、出回るサクランボで有名なのは佐藤錦。その甘さは格別だ。昔はそれほどサクランボが甘くなかった記憶がある。品種改良によって、商品価値が高められてきたのだろう。

 サクランボは、われわれが花見をするサクラの実とは違う。子供の頃は、サクラの花が散った後にサクランボがなるものだと思っていた。よく熟したものがあれば取ろうとサクラの木を見上げたものだった。

 残念ながら小粒の黒い実のようなものが鈴なりになっているだけで、到底食べられるとは思えなかった。サクランボは農家で育てないとできないのではないかと考えたりした。同じサクラの品種だと思っていた勘違いである。サクランボ栽培では、青森、秋田、山形など主に東北が有名。

 その東北人は、無口で、あまり社交的ではないイメージがある。だが、実際は身内同士ではかなり能弁でユーモアもある。特に、文学者の太宰治や石坂洋次郎、藤沢周平など、作品では饒舌で独特のユーモアがある。

 1948年のきょうは、6月13日に自殺した太宰の遺体が発見された日。くしくもこの日は太宰の誕生日でもあり、「桜桃忌」と名付けられた。

 桜桃(サクランボ)の時期であることや晩年の作品「桜桃」が由来。ゆかりの東京・三鷹市の禅林寺で供養が行われ、毎年多くのファンが集うことでも知られている。