2020年東京五輪・パラリンピックの大会エンブレム…


 2020年東京五輪・パラリンピックの大会エンブレムが決まったが、五輪準備のための課題は他にも少なくない。新国立競技場内の暑さ、湿気対策も重要だ。

 前回の東京五輪は、1964年10月10日(後の体育の日)から24日にかけて、明澄な秋空の下で行われた。次期東京五輪は、7月24日から8月9日までの夏の真っ盛りに開かれる。

 費用増大などで見直しになった先の競技場案の場合も、冷房装置設置をめぐり侃々諤々の議論となった。その教訓を得て今回、木の持つ温かな質感を生かし、植栽や自然風を利用した暑さ対策を行うという。

 よりやっかいなのは湿気対策だろう。懐の深いすり鉢状の3層スタンドとなる予定だが、屋根は通気の良い木材と鉄骨とのハイブリッド。法隆寺五重塔などに見られる「垂木」を想起させるひさしと、柱が連続する外観を呈することになる。

 「『暑さ』よりは『湿気』の方が耐え難いのである。しかも暑さよりは湿気の方が防ぎ難い」。モンスーン域の風土の影響下、日本人を「受容的忍従的」と性格付けたのは哲学者・和辻哲郎。

 また西欧を「夏の乾燥、冬の雨期」の風土と規定し、西欧人の合理的な人間性が涵養されたとした。この風土の違いは彼我の差があると和辻は指摘している。日本の伝統建築の工法や建材を生かしたスタジアムが完成し、暑さ、湿気対策ができれば、西欧人は大いに驚くだろう。