「朝刊とパンとコーヒー風五月」(浅野右橘)…
「朝刊とパンとコーヒー風五月」(浅野右橘)。きょうから5月になる。新緑や初夏という言葉がふさわしい、さわやかさをもたらしてくれる季節である。
稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』では「夏」という季語について「立夏(5月6日ごろ)から立秋(8月8日ごろ)の前日まで。(略)初夏は木々が若葉し快い時期であるが、やがてじめじめした梅雨に入り、梅雨が明けると本格的な夏の暑さが訪れる」とある。
初夏は心地よい風が肌に感じられ、緑色がひときわ映える植物も育ち盛りといったところだ。先日、久し振りに帰省して戻ってくると、春菊の花がベランダの柵から日に首を伸ばして咲いていた。
「ひとたきに菊菜のかをりいや強く」(高浜年尾)。春菊はどちらかといえば、早春のころの植物で食用にするイメージが強い。「菊菜ともいい早春、若葉を採って食用にする。香り高く、浸し物や和え物、鍋物にも好まれる」(『ホトトギス新歳時記』)。それが花咲いていたのだから驚いたわけである。
春菊も植物である限り、花が咲き、実をつけて種となるのは当たり前のこと。それに気付かなかったのも、花が咲く前に摘んで食べてきたからであり、スーパーなどで買っていたせいでもある。
自分で種から育ててみないことには、なかなか花まで見る機会はない。その意味で、観賞植物にも劣らない春菊の花の美しさに自然の神秘を改めて感じた。