今年、英国の劇作家シェイクスピア(1564~…
今年、英国の劇作家シェイクスピア(1564~1616年)没後400年を迎えた。約20年間の作家生活で「マクベス」など四大悲劇と呼ばれる作品をはじめ、「ヴェニスの商人」「真夏の夜の夢」など多くの傑作を残した。
先日、ジャスティン・カーゼル監督の映画「マクベス」の試写を鑑賞した。将軍マクベスが妻と謀って主君を暗殺し王位に就くが、内面の重圧に耐えきれず自滅していく様は見応え十分。そのモチーフに普遍性があるゆえだろう。
古典劇が違和感なく今日の世界に発信され、商業的にも成功しうるというのはいささか羨ましい。ただし配給される国々の多くが英語圏だからという理由も見逃せない。
日本人のシェイクスピア好きはよく知られており、例えば生家を訪れるのは、英語圏以外の人の中では日本の観光客が最も多いそうだ。その作品群は明治期以来、坪内逍遥らの訳で日本人の教養を培ってきた。
浄瑠璃や歌舞伎はシェイクスピアの活躍から約100年後、江戸元禄期に隆盛の波に乗って今日も進化を続けている。古典・伝統に対する関心や保護の在り方が日英で似通っているとも言われる。
今、文部科学省の「大学文系学部の廃止・見直し論」が物議を醸している。その議論を聞いていると、シェイクスピアのような世界の文豪たちの日本社会での影響力低下を映し出しているように思われる。文化的に危惧される一事である。