万葉集には短歌や長歌だけでなく、仏足石歌体…


 万葉集には短歌や長歌だけでなく、仏足石歌体、旋頭歌、片歌などさまざまな形式の歌がある。が、その基本は5音と7音。片歌は5・7・7の形式だが問答の片方で、もとは2首一組。その片方という意味だ。

 「長歌はその後衰えたのですが、近代に代わるものが作られるようになった。いわゆる『近代詩』です」と、万葉集研究家の四宮正貴さんは小紙「建国記念の日特集」(2月11日付)で語っていた。

 興味深い指摘である。その伝統を継承した詩人たちの例として浅野晃、薄田泣菫、島崎藤村、土井晩翠、萩原朔太郎らを挙げていた。藤村の『若菜集』に収められた詩を読むと5音・7音を使っている。

 万葉集のリズムは近代・現代でも詩語のリズムとして生き続けているのだ。一方、現代歌人の中には長歌や旋頭歌を作る人たちがいる。迯水短歌会を結成し「迯水」を創刊した故・市村宏はその一人。

 アララギで学んだ歌人だが、国文学者で専門は上代文学。上代文学会理事長も務めた。その指導を受けた現在の「迯水」編集人・中根三枝子さんも、歌集『甦れ万葉植物』の中で、マツを主題に長歌と反歌を作っている。

 これはマツに関わる日本人の歴史を歌い上げた一代記。松島、厳島、天橋立と名所が登場し、古事記のドラマも、平成23年3月11日の大津波も描かれる。反歌でこう歌う。「細雪 我が待つ春の いつならむ 松の末ほのか 太りゆく見ゆ」