北朝鮮による拉致被害者の家族たちはいま、…


 北朝鮮による拉致被害者の家族たちはいま、強い怒りと焦燥感の中で日々を過ごしている。年明け先月4日で、北朝鮮がいわゆる「特別調査委員会」を立ち上げてから1年半が過ぎた。なのにこの間、日本が三つの制裁を解除しただけで、被害者は一人として解放されていない。

 政府はこれに公式に抗議しなかったし、マスコミも国際社会も黙っていたから。もう一つ。北朝鮮が「水爆」と称する核実験の暴挙に出たのは、その2日後の6日で、今度は政府も、国連安保理の追加制裁決議採択に向けて動き出した。

 日本独自の厳しい制裁も行う構え。だが、検討されている自民党の13項目案が、実は昨年6月に自民党拉致問題対策本部がまとめたものだからでもある。

 対策本部案は、1年を経ても拉致被害者の帰国が実現していない場合に備えて立案された。それが1年半が過ぎても店ざらしのままにされてきた。

 なのに、北朝鮮が核実験を強行すると、対抗措置としてにわかに発動が検討され出したのだ。もとより北朝鮮への懲罰に賛成だから言いにくいのだが、要するにこれは対策本部案の「横取り」である。

 家族らは「拉致問題が置き去りになりかねない」今日の事態を強く憂慮している。この上は政府には独自制裁の発動理由に必ず「拉致被害者の帰国未実現」の明記を、安保理の新制裁決議には「拉致を含む人権侵害」が加えられるよう求めたい。