10月頃地方の田園地帯に行くと、至る所に…


 10月頃地方の田園地帯に行くと、至る所に黄色い花が群生しているのを目にする。セイタカアワダチソウというキク科の多年草で「要注意外来生物」である。繁殖力が強く、どんどんその版図を広げ、ススキなどの群生地を侵食している。

 かつて田んぼだった耕作放棄地は、この黄色い植物にとっては格好の場所だ。耕作放棄地に黄色い「要注意外来生物」が広がる風景は、日本農業の荒廃を象徴している。

 半世紀近く続いてきた減反政策を5年後に廃止することが決まった。食料自給率が40%以下であるにもかかわらず、総面積で埼玉県の広さに匹敵する耕作放棄地があることは、どう考えてもおかしなことだ。

 にもかかわらず、歴代政権は、農家の票を失いたくないために、手を付けてこなかった。この決められない農政を転換させたのは、安倍政権が参院選で大勝したことがまずある。そして環太平洋連携協定(TPP)交渉入りが決定的だった。競争力のある農業へ転換せざるを得ない状況となったのだ。

 300年近く続いた鎖国政策そして幕藩体制そのものを崩すきっかけとなったのは、黒船の来航であった。同じように、日本の農政を変えたのも、TPPという21世紀の黒船ということか。

 とはいえ外圧と無知によって不平等条約を結ばされた幕末と違うのは、主体的に国を開き、国益を守るための交渉ができること。外圧を自己革新の力へと転ずるチャンスでもある。