わが国領海の深海は、海底熱水鉱床をはじめと…


 わが国領海の深海は、海底熱水鉱床をはじめとする海洋エネルギー・鉱物資源や海洋生物の宝庫だ。しかしわが国の海洋開発の歴史は意外と浅く、本格的には1980年代になってから。

 その期待を背負って81年に就航したのが海洋研究開発機構の調査船「なつしま」(1739㌧)で、当時は海洋調査船として世界最大の規模を誇った。有人探査機「しんかい2000」(潜航深度2000㍍)の支援母船として活躍し、日本の「深海調査・研究のパイオニア」(平朝彦同機構理事長)だった。

 その調査船の退役がこのほど決まった。この間、なつしまには有人・無人の探査機が搭載され、相模沖や伊豆・小笠原海域、沖縄沖などで熱水鉱床や珍しい深海生物を発見した。ずいぶん感慨深い。

 なつしまは資源探索だけでなく、2005年にはインドネシア・スマトラ島沖地震による海底大変動、昨年は噴火を続ける西之島周辺海域の調査も行った。潜水調査船の支援母船として、各国の同種船舶の範となった。

 一方、「しんかい2000」は探査機操作の練度を向上させ、機器技術、システム開発の成果が、89年就航の「しんかい6500」(潜航深度6500㍍)につながった。

 「6500」はその後、世界の深海調査研究の中核を担い、同機構は今後10年以内に、さらに能力をアップさせた「しんかい12000」の完成を目指す。「継続は力なり」である。