先にこの欄で、日本の紅葉を見るために…


 先にこの欄で、日本の紅葉を見るために海外から多くの観光客が訪れるようになったと記した。その理由は、日本の紅葉が海外ではあまり見られないほど色鮮やかなことがある。特に、モミジが紅葉する景色が珍しいという。

 もちろん海外でも、秋になれば落葉樹が色づく所はあるのだが、イチョウのように黄色いものが多い。このため、日本の山々に赤く色づくモミジなどを見ると驚きや感動を呼ぶらしい。赤い色に染まった風景は、まさに絶景と言える。

 会社の近くの桜も、このところ色づき始めた。モミジのような原色の鮮やかさはないが、茶色に、黄、赤などがふぞろいに点描されている。一見すると少しみすぼらしい印象を受ける。だが、じっと見ていると深い味わいがあって、モミジにも勝るものがある。

 ことに秋のやわらかな日差しに透かしてみると、巧緻な芸術作品のように美しい。これは、日本の古寺の仏像や古びた建築物に通じるものと言っていい。仏像も最初は金箔(きんぱく)などで飾られキラキラ輝いていたものが、やがて黒ずんでくる。どちらも貴いと感じるのは同じだが、感性にしっくりするのは、やはり古びたもの。

 それだけ日本人が時を経たものを大切にし、守り続けてきたからだろう。木造建築で世界最古の法隆寺は、その代表的なもの。

 一方、伊勢神宮では社殿を20年ごとに新しく建て替える。この違いに、日本人の豊かな精神性を感じる。