国産ワインの大半は、海外から輸入したブドウ…


 国産ワインの大半は、海外から輸入したブドウ果汁で醸造されてきたが、最近のワイン人気もあり、ブドウ栽培を国内で手掛ける「日本ワイン」の製造が拡大している。

 山梨県甲州市や長野県上田市産のブドウは、その酸味が和食の繊細な味に合うと言われ需要が高まっている。また山梨大は2012年度から生命環境学部地域食物科学科ワイン科学特別コースを設け、ワインの専門家を育てるという力の入れようだ。

 ワインを特産品にという動きは、東日本大震災の被災地でも広がっている。岩手県沿岸では明治時代創業のブドウ園が自社醸造へ踏み出したほか、宮城県唯一のワイナリーが新たに開業した。

 このうち、岩手県陸前高田市の「神田葡萄園」は1905年創業の老舗。食用ブドウを栽培してきたが、被災後の12年からワイン用品種の栽培を始めた。熊谷晃弘代表(32)は「内陸に比べ夏が涼しく、ブドウ本来の酸味がしっかり残る」と話す。

 日本ワイン製造は、良質なブドウを収穫するための栽培技術が不断に研究され、開発されたその成果だ。そして市場参画への意欲は、被災地復興の証しの一つでもある。

 また元来「原日本人の持つ根深い嗜好こそ、外来文化を日本化する力の根源」「日本列島は、味覚文化から見ると、さながら各味覚部族の合衆国の観」(近藤弘著『日本人の味覚』、中公新書)がある。日本ワイン造りに勤しもうとする歴史的背景と言えよう。