「交通事故死は本人にも家族にも突然、訪れる…
「交通事故死は本人にも家族にも突然、訪れる。明日も翌年も持続するはずの日常が、非情にも断ち切られてしまうのだ」。昨秋、地方の市で愛犬と仲良く1人暮らしを続けていた91歳の父親を交通事故で亡くし、遺族となったジャーナリストが、深い悲しみと憤りを胸に手記を綴った。
事故現場に足を運び、乱暴な運転者が後を絶たない実態を目にする。「現場近くには横断歩道もあるが、かなり危ない。見通しが悪い地点である上に、歩行者がいても車は減速しないのだ」。
「11月下旬に実家に戻ったときも横断中の私に黒の四駆が加速して威嚇しつつ迫ってきた」。これでは、また事故の犠牲者が出る。「その1人に埋め込まれる不条理。まるで車社会の『人柱』ではないか」と糺す。(「論説委員 日曜に書く」長辻象平、産経12月6日付)。
2015年の全国の交通事故死者は前年より4人多い4117人(小紙5日付)。このうち65歳以上の高齢者は54人増の2247人で、死者全体に占める割合は、統計の残る1967年以降で最も高い54・6%。
さらに、高齢者の死者の半数が歩行中の事故によるもの。長辻さんは「車の運転者が、路上の高齢者の姿に気をつけるだけで千人の犠牲を回避できる計算だ」とも書く。
交通安全運動で、高齢者の事故防止が喫緊の課題となって久しい。改めて運転者には、特に高齢者に注意を払うよう安全運転の徹底を強く呼び掛けたい。