小泉純一郎元首相が、原発「即ゼロ」を主張し…


 小泉純一郎元首相が、原発「即ゼロ」を主張し物議を醸している。

 引退したはずの役者がまた出てきて、昔その演技に随分悪酔いしたことも忘れた一部の観客から喝采を浴びているような不思議な光景である。

 脱原発について小泉元首相は毎日新聞「風知草」欄(8月26日付)で、山田孝男記者にこんなことを言っている。「戦はシンガリ(退却軍の最後尾で敵の追撃を防ぐ部隊)がいちばん難しい。退却が」「昭和の戦争だって、満州(中国東北部)から撤退すればいいのに、できなかった」。

 気流子も以前小欄で、小泉元首相とは逆に「原発ゼロ」を拙劣な退却戦に例えたことがある。安易な原発ゼロが及ぼす経済、環境問題への影響、原子力技術の喪失などがあるからだ。

 日本の合戦史上、最も成功した退却戦は、元亀元(1570)年の織田信長・徳川家康軍の越前・金ケ崎からの撤退。この時、シンガリを務めたのが明智光秀、池田勝正で、羽柴秀吉に至っては、金ケ崎城に残って、敵の朝倉勢を引きつけて撤退を助けた

 小泉元首相は信長を尊敬しているというから、この史実はよくご存じのはず。「即ゼロ」は信長・家康軍の退却戦には程遠い、算を乱しての逃亡にはならないか。これでは撤退を決断しても、大きな損失は避けられない。

 むしろ、信長が好きな小泉氏の政治の弟子である安倍晋三首相は、金ケ崎に踏みとどまった秀吉の役を果たそうとしているのではないか。