産業施設の安全を確保するには、…


 産業施設の安全を確保するには、機械装置の質の高さも重要だが、従業員が仕事の意義をよく理解し、高い士気を保っていることが大切だ。

 原子力発電所の安全対策についても同じで、原発本体の規制基準を満たすとともに、職員たちが自分の仕事を誇りに思えるような環境作りが必要だ。例えば、原発施設が地域住民のお荷物と思われ、“異物”のように見られていては、職員の士気は高まるまい。

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)をめぐり、同町に隣接する八幡浜市の大城一郎市長は今月、再稼働に条件付きで賛成すると表明した。伊方原発30㌔圏7市町のうち、賛否を表明した自治体は初めて。

 市長は「市民代表の意見集約の結果を受けたものだ」と説明。再稼働の条件として、安全確保▽事故時は国が全面的に責任を負う▽避難計画の実効性確保への継続的な取り組み――などを挙げた。

 総体的に原発再稼働に消極的な空気がある中で、市長はじめ住民たちの勇気ある行動を評価したい。再稼働に弾みが付くし、原発職員たちもサポーターを得て、改めて使命感を強くしただろう。

 地元企業を大事にし、そこで働く人たちの人権を大切にしたいという八幡浜市や市民の気持ちが伝わってくる。東京電力福島第1原発事故後の再発防止をめぐる議論の中で、ややもすると原発で働く人たちの声がかき消されてきたのを残念に思うのは気流子だけではないだろう。