電車の網棚に乗せた荷物を置き引きされる…


 電車の網棚に乗せた荷物を置き引きされる事件があった。こんなことは全国あちこちで発生しているだろうが、被害者が国土交通省航空局長となると新聞記事になってしまう。

 カバンの中身は機密性の高いものではなかったようで、厳重注意という軽い処分で済んだ。局長は被害者で、悪いのは犯人に決まっているが、被害者側の危機管理の問題は残る。

 公的機関が情報を盗まれるといった場合、管理の甘さは指摘される。他国を侵略するのは悪だろうが、それを許すような国策を取ってきた被侵略国の側の責任も問われる。国家には国土と国民を守る義務があるからだ。

 新幹線であればともかく、都市部を走る電車は2分程度ごとに停車することもあって、乗客の出入りが激しい。そんな状況下で、荷物を手放したまま寝込むのは、いささか暢気(のんき)との印象は免れない。

 改めて電車内を見渡してみると、荷物を網棚に置くのは男性の老人が圧倒的に多い。対して若者は、しっかり荷物を抱えている。自然と防犯意識が働いているようだ。老人の場合、荷物を手放しにしていても盗まれることがなかった、という経験が多いのだろう。

 年齢と防犯意識の間には相関関係があるのかもしれない。どうやらそこには、文化やライフスタイルの違いが、我々が漠然と考える以上に明確に存在している。だらしない若者は相変わらず多いが、彼らも電車内の防犯意識はまともなようだ。