「芸術の力を世界に発信しよう」と…
「芸術の力を世界に発信しよう」と2007年4月に始まった東京藝術大学の企画「学長と語ろうこんさーと」が、今回で14回を数え、先週末、同大学奏楽堂で作家の夢枕獏さんをゲストに迎えて開かれた。
テーマは「人はなぜものを創るのか?」。宮田亮平学長はイルカをモチーフにした「シュプリンゲン」シリーズで知られる金工作家。夢枕さんは『陰陽師』シリーズなど、漫画化・映像化された作品も多い。
ふたりは芸術家だ。宮田学長が夢枕さんの仕事の幅広さに驚いて尋ねると、夢枕さんは答えた。「子供の頃好きだったオモチャがまだ捨てられずにある、という感覚なんです」と。
オモチャ箱こそ創作の源泉。宮田学長が自分の故郷・佐渡を話題にすると、その島は夢枕さんが何度も釣りに行ったところ。「われわれは渓流に行くんです。小さい川なのに魚が大きい。30㌢のイワナがたくさん釣れました」。
宮田学長が子供の頃遊んだのは海。夢枕さんに釣りは渓流派? 海派?と尋ねると、映像で示された。北海道のアメマス、奥多摩湖のニッコウイワナ、与那国島のトローリングで釣ったカジキ。両方なのだ。
そんな経験が夢枕さんの『大江戸釣客伝』にも生かされている。一方、宮田学長もとっておきの映像を披露。バハマ諸島のビミニでイルカと戯れ泳いでいる姿だ。金工作品がどこから生まれてきたのか、その原点にふれる思いがした。