「お釜と称する山上湖は蔵王の宝玉とも言う…


 「お釜と称する山上湖は蔵王の宝玉とも言うべき存在で、それのために馬ノ背の逍遥(しょうよう)は一段と精彩を加える」。深田久弥は『日本百名山』の中で蔵王山(1841㍍)の噴火口湖水をこう称える。

 蔵王山は宮城・山形県境の山脈で、昔から信仰の山だった。冬はスノーモンスターの雪景色が美しく、戦後はスキーヤーのメッカとなった。この山で今月7日から火山性地震が増え、気象庁は13日、火口周辺警報を発表した。

 噴火の起きる恐れがあるのは「馬の背カルデラ」から1・2㌔範囲、御釜から半径2㌔、東には3㌔の範囲。山岳観光道路「蔵王エコーライン」の開通予定は今月24日だが、宮城県川崎町の御釜に続く登山道入り口では、警報区域への立ち入りを規制する看板を設置した。

 昨年9月、御嶽山噴火では多数の犠牲者を出した。これを教訓に政府は活動火山対策特別措置法(活火山法)の改正案を今国会に提出する。活火山に立ち入る際に警察や自治体への登山届を努力義務と定めるもの。

 登山届は、入山前に氏名や住所、日程、ルートなどを記入して、登山口に設置されたポストなどに提出する。遭難や行方不明の時には捜索が容易となり、関係者への連絡にも役立つ。

 登山届は自分を守ってくれるものでもある。山岳会などでは義務付けているところが多いが、入会する新人は減る一方、登山人口は増えている。山の先輩に教わる機会のない人が増えているのだ。