大の昆虫好きで『ファーブル昆虫記』の翻訳者…


 大の昆虫好きで『ファーブル昆虫記』の翻訳者として知られる仏文学者の奥本大三郎さんから直接うかがった話。香港を舞台にした名作映画「慕情」(1955年)の中で主演のウィリアム・ホールデンとジェニファー・ジョーンズが、海の見える丘の上で語り合う場面で、蝶が羽根を広げて止まっているところが映し出される。

 しかし、羽根を広げて止まるのは蛾で、蝶は羽根をたたむ。奥本さんは、紙か何かで造ったこの蝶が気になって、映画に入り込めなかったという。

 NHKの朝の連続テレビ小説「まれ」がスタートした。能登半島の田舎が舞台のこのドラマ、全国的にはまだ馴染みの薄い能登弁が盛んに語られる。幸か不幸か能登生まれの気流子は、その方言が気になって、観ていてもちょっと落ち着かない。

 さすが田中裕子さんや田中泯さんは、その雰囲気がよく出ている。子役たちも頑張っている。それでもイントネーションなど、いまひとつなのである。地元の人たちは、何かしっくりこないものを感じているかもしれない。

 もっとも、それはドラマの本質とは関係ない。能登出身者が、朝ドラで能登方言がばんばん出てくることに、かつてない興奮を味わっていることは間違いない。

 地方創生のテーマは、いかに地方の個性を生かした新しい産業を生み出すか。多くの方言は、日本の地方がいかに多様な魅力を持つかを表すものと言える。たかが方言、されど方言である。