19世紀英国の名随筆家チャールズ・ラムは…
19世紀英国の名随筆家チャールズ・ラムはその『エリア随筆』で、人間には「借りる人と貸す人」の二つの種族があると述べている。もっともラムがそこで具体的に取り上げているのは、お金ではなく本の貸し借りである。
ラムは言う。「書物の所有資格は、その書物の要求者の理解力、並びに鑑賞力に正比例する」。この説に従い友人に本を貸すため、ラムの書棚は、例えばボナヴェントゥーラ全集など櫛の歯が抜けたようになっている。
ラムが大切な本を貸した人物として挙げているのが、友人でロマン派詩人のサミュエル・テイラー・コールリッジラムによるとコールリッジは、貸した書物を約束の日よりも早く、しかも解説や書き込みを付けて「価値を三倍にして」返してくる。貸した本に書き込みなどされれば、普通は迷惑がるが、それが有意義なものだったからだろう、ラムは喜んでいる。
日本では空海が最澄の求めに応じて、唐から持ち帰った密教経典を度々貸した。しかし、それが余りに度重なったことがきっかけで関係が断絶した話は有名だ。空海の経典は当時の最先端の知ということもあるが、本の貸し借りというのは意外と難しい。
ラムの言葉は「ものを貸す時は相手をよく見て」ということに繋がる。お金も貸すことによって利子が稼げるかだけでなく、社会の利益になるかも問題になる。貸してはならない人々に貸した日本の大手銀行などは全く論外である。