明けましておめでとうございます。今年は…


 明けましておめでとうございます。今年はヒツジ年。東京・上野にある東京国立博物館では「博物館に初もうで」が2日から始まり、中央アジアから東アジアまでのヒツジに関する遺物を展示する。

 東西を問わずヒツジは人類にとって最も身近な動物の一つ。神への最適な捧げものとして考えられ、古代中国の青銅器でも「美」「善」「祥」という文字に「羊」の字が使われてきた。

 日本には6世紀、推古天皇の時代に貢献されたと伝えられるが、飼育記録はなく、明治時代まで想像上の動物に近い存在だったらしい。日本人が肉食をするようになっても、羊肉の消費は豚肉や牛肉には及んでいない。

 だが羊毛は別だ。「天然繊維の王様」とされ、セーター、スーツ、シャツ、下着にまで用いられている。冬は暖かくて夏は涼しく、弾力性に富み、汚れにくい。1960年代、アクリル繊維の登場で「羊毛よ、さようなら」と言われたが、逆にそのよさが再認識された。

 運動生理学を専門とする信州大学教授の能勢博さんは、登山の防寒具について「肌着の材料は羊毛が基本」と述べる(『山に登る前に読む本』)。天候が雨から吹雪に変わった時など、濡れても抜群の保温効果を発揮するからだ。

 さてヒツジに関する記述が多い本と言えば聖書だ。500回以上も登場する。肉は食用、毛は織物の材料、乳は飲料とされたが、種々の供犠(くぎ)にも用いられた。人と神とをとりなす動物だった。