「安全学」という学問の一分野がある。…


 「安全学」という学問の一分野がある。交通機関やコンビナートの大規模構造物などの事故低減を図るためのものだ。

 その方法は事故原因の調査によって、今まで見過ごされていた物理現象を見つけ出し、そのつど弱点を克服し安全性を高めていく。極論のようだが「安全管理においては…事故は必ず起きるという認識が重要である」(『現代の航空輸送』航空政策研究会編)。

 原子力発電の安全性追求についてはどうか。わが国の原発事故は、東京電力福島第1原発の事故が起きるまで一般人を巻き込むことはなく、この時も一般人に死者はなかった。

 こういう中で、今後の事故ゼロが性急に期待され、その保証の任を担わされているのが原子力規制委員会だ。ところが先日、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の審査書案を了承したことについて、田中俊一委員長は「新しい規制基準に適合していると認めた。安全か、安全じゃないかという表現はしない」と述べた。

 九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)の時と同様、安全性への言及を避けたのだ。さらに「規制はミニマム(最低限)であって、事業者はより高い安全を目指すべきだ」と一層の努力を促した。

 田中委員長の発言は、「安全学」の視点からも現実的で誠実である。原発への人々の偏見をなくし、事業者は小さな事故にも毎回十全の対応をすること――それが大事故を無くすベストの方策だ。