「政治家の資質」の面から鎌倉幕府3代将軍…


 「政治家の資質」の面から鎌倉幕府3代将軍源実朝を見たらどうなるか。高い評価が下されることはなさそうだ。実朝を明確に批判した武士がいた。「将軍は歌や蹴鞠に熱中するばかり。これでは武芸は廃れてしまう」と述べたこの人物の名前も分かっている。実朝に叱責されたことのある長沼宗政という有力武士だ。

 彼は実朝の面前で批判したわけではない。が、『吾妻鏡』の1213年9月26日の条に記録されている。当時実朝は22歳。5年後暗殺される。

 実朝は政治的に無能だった、という通説に異議を唱える専門家もいる。坂井孝一著『源実朝』(講談社選書メチエ)という本は、武芸は得意ではないが、将軍としては一定の力量を発揮している、と指摘する。

 政界の実力者で、母政子の弟北条義時(執権)の強引な要求を実朝は退けている。裁判も公正だったと言われる。武芸が苦手だから政治もそうだとは言い切れない。

 「実朝=政治的無能」という通念も、最新の歴史学の成果によって見直される必要がありそうだ。実朝が長命で将軍職を続けた場合、義時との権力闘争に勝利した可能性も考えられる。

 「現(うつつ)とも夢とも知らぬ世にしあればありとてありと頼むべき身か」と実朝は詠んだ。「この世はあるのかないのか分からない。だから我が身もはかなく頼りないものに思えてしまう」といった一見頼りない実朝も、案外有能な将軍だったかもしれないのだ。