「水底の岩に落つく木の葉かな」(丈草)…
「水底の岩に落つく木の葉かな」(丈草)。蛇口をひねって水道の水に手を浸すと冷たさが一段と強く感じられる。そろそろ手や顔を洗うにも、温水が欲しくなってくる。水温は季節の変わり目をよく示していると言える。
雨などはその代表的なもの。慣用的な表現に「一雨ごとに寒くなる」がある。冬に近づくと、雨が降るたびに、その温度が低くなるのが実感される。
逆に、春には「一雨ごとに暖かくなる」という言い方もある。どちらにしても、微妙な季節の変わり目を感覚的に捉えた表現だ。日本語は、時候の挨拶も驚くほど多彩である。
例えば、11月では「晩秋」「霜秋」「深秋」「夜寒」「氷雨」「菊薫る」「初霜」「初冬」などがあり、手紙の冒頭に用いられる。知っていれば便利な表現だが、やや形式的に感じられてしまう言い方である。
時候の挨拶も、かつては大切なコミュニケーションのツールだったはずである。しかし今では、あまり使われないようだ。言葉は人間同士の距離をも反映するから、現代社会はそれだけ距離が取りにくくなっているのかもしれない。
そろそろ12月になるので、来年の年賀ハガキを購入しなければならない。知人や友人、親戚らを思い浮かべて、毎年購入する数を決めているが、年ごとに少しずつ変化している。果たして、来年はどれだけの人と縁を結べるだろうか。そのことを考えると少しばかり心が温かくなる。