昨年大フィーバーしたNHK朝の連続テレビ…


 昨年大フィーバーしたNHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」の中で、印象深いシーンがある。母親の故郷東北の海辺町に東京から転校した能年(のうねん)玲奈(れな)演ずるヒロインの天野アキが、親友となる足立ユイ(橋本愛)と交わす会話。

 行ったことのない東京に強く憧れアイドルになりたいユイと、都会生活に疲れ田舎の自然と生活が気に入るアキ。対照的な2人が海岸で会話する中で、ユイが目を輝かせて、いつもそこに通っているように原宿の街並みを細々(こまごま)とよどみなく話す。

 その一つひとつが東京で生活していたアキの知らないことばかり。驚いたアキはユイの顔をただ見つめた。東京に出たくて仕方のないユイは、東京とアイドルについての情報をかき集めていた。

 アイドルになりたいという強い思いから、本やガイドブックを片っ端から精読していた。東京に住んだこともないのに、アキが目を白黒させるほどに東京に精通していたのである。

 見逃しそうな短いシーンであったが、読書が持つ空間や距離を超える横軸で、知の無限の可能性を鮮やかに描いていた。読書の持つ、もう一つの大きな可能性は縦軸。遠い過去の時代に瞬間移動して歴史を旅したり、リアリティーある未来世界に想像力を膨らませて飛べたりすることである。

 読書は時空を超えた未知の世界に、私たちを招待してくれる。読書週間は文化の日(11月3日)を中心とした2週間で、昨日から始まった。