中村修二米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授…


 中村修二米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授が以前、東京・有楽町の外国特派員協会で講演した時、エレベーターの中でたまたま出会った。あいさつ程度の会話だったが、日米の人材発掘への投資の差について力説していた。

 青色発光ダイオード(LED)の開発で今年のノーベル物理学賞受賞が決まった日本人3人のうちの一人。LEDは量子力学による現象だが、青色の登場でその用途が飛躍的に拡大し、現代社会に欠かせなくなった。

 中村氏は以前、特許の帰属問題で訴訟を起こし物議を醸したが、正義漢で熱心な教育者という面が強い。四国の愛媛県西宇和郡瀬戸町(現在の伊方町)生まれ。佐多岬半島にある小さな漁村で原発立地で知られる。

 愛媛県人はのんびり屋が多いと言われるが、南予と呼ばれるこの周辺は明治以来、一徹で熱心な教育者を輩出している。中村氏も一徹で、強い信念の持ち主だ。

 徳島大学大学院工学研究科修士課程を修了。京セラに内定していたが、家族の養育の関係から徳島に残り、地元の日亜化学工業に就職した。この決心が結果的に幸いしたから人生は面白い。

 同社は当時、年間売り上げが20億~30億円の中小企業。蛍光体を作る化学会社で溶接の仕事が続いたが、半導体の結晶成長の研究を任されたことから道が開けた。その後、社長に直談判して機会が得られた米国留学で才能が一気に開花したのだ。