音楽家の坂本龍一さんが以前、脱原発集会に…


 音楽家の坂本龍一さんが以前、脱原発集会に参加し「たかが電気のために命を危険に晒(さら)してはいけない」などと発言した。生命に比べて電気などものの数ではない、ということであろう。

 確かに生命は大切だが、電気も生活を豊かにするもので現代社会には欠かせない。電力供給のため、これまで人類が続けてきた技術革新の努力は決して無視できない。原発もその努力の結晶である。

 原発はかつては「無謬(むびゅう)」とされ、翻って今は「害毒」と言って憚(はば)らない人たちがいる。開発者や運営者にとっては、ともに本意でなかろう。技術はうまく制御し利用してこそ力が発揮される。

 電力各社の2014年3月期決算は原発を代替する火力発電用燃料費が膨らみ、原発保有の9社中6社が経常赤字となった。電気料金の再値上げが模索されており、家計や企業のさらなる負担増が現実味を帯びてきた。

 そのうち北海道電力は先月末、家庭向け電気料金の平均17・03%の値上げを経済産業省に申請した。もちろん、北電には一層の経営努力が求められる。しかし、ほぼ全ての電力会社が四苦八苦している状況は異常だ。

 エネルギー企業がこの状況では、その歪(ゆが)みがほどなく他の産業に及んでいくはずで大いに不安だ。電気料金の値上げを避けるには、安全性が確認できた原発を再稼働する必要がある。エネルギー問題は国任せでなく、国民一人ひとりが真剣に考えなければならない課題だ。