夏休みもあと10日余、暦の上で秋が立って…
夏休みもあと10日余、暦の上で秋が立って明日で2週間となる。今週末23日は暑さがおさまるとされる処暑(しょしょ)だが、5年続きの猛暑はしぶとく居座ったまま。連日の真夏日に、今が夏真っ盛りだとばかりのセミ時雨がかまびすしい。
正岡子規の句に「秋たつやほろりと落ちし蝉の殻」があるが、「そよりともせいで秋立つ事かいの」(上島(うえじま)鬼貫(おにつら))の方が季節感に近く、秋の気配はなお遠い。真夏の陽光を浴びた百日紅(さるすべり)も元気はつらつ。
緑の濃い公園や家の庭先、街路樹の中で、薄茶色の艶(つや)やかな木肌と赤、白、ピンクの花をひときわ鮮やかに咲かせている。炎天下に百日もの間、花を咲かせる様を高浜虚子は「炎天の地上花あり百日紅」と詠いあげた。
8月は夏と秋、現世と来世が入り混じる不思議な月である。月央に15日の終戦記念日があり、今年も国のために命を捧げた人や先祖を慰霊する中で平和や命の大切さについて思いを深めた。その前後にまたがって、あの世がこの世に降りてくるお盆が終わったばかり。
13日に赤トンボの案内で祖霊が里にやってきて、迎える家族ともども過ごす。ナスやキュウリで作ってまつる牛や馬が祖霊の帰りの足で、16日に「送り火」に送られて彼岸に帰って行ったのである。
夏の納涼イベントになっている盆踊りも祖霊への感謝の行事。神と祖霊に収穫に感謝する供え物をし、ともども踊り交歓することで、自身のルーツに目覚めるのである。