「ホラホラ、これが僕の骨だ」。中原中也の…
「ホラホラ、これが僕の骨だ」。中原中也の「骨」という詩の冒頭部分だ。自分が自分の骨を見ている。詩である以上、何を言ってもいい。が、後半部分では「見ているのは僕? 可笑しなことだ」「霊魂はあとに残って、/また骨の処にやって来て、/見ているのかしら?」と続く。
臨死体験に含まれる幽体離脱と呼ばれる現象を描いた詩と言われるが、最近は、こうした現象を神秘的に考える必要はない、という流れになっているらしい。
『超常現象』(NHK出版、2014年)という本によれば、ネズミの実験で、心臓停止後30秒ほど脳が活動していることを確認した研究(米国)がある。人間とネズミの違いはあるが、心臓が止まっても脳が動いていれば、臨死体験があっても不思議はない。
米空軍のパイロットが、訓練で通常の10倍の重力をかけられて低酸素状態になった時に臨死体験をした、という話も紹介されている。
フランス革命のさなか、マリー・アントアネット(38歳)が処刑で首を切断された後、まばたきした話を読んだこともある。臨死体験に関して「死後の世界」を想定する必要はない、と考えることもできそうだ。もっとも、死後の世界がないとも言い切れない。
一昔前の民放テレビの番組では、この種の現象は単なる娯楽として扱われてきた。科学的な解明を目指そうという昨今の流れを見ると、事態はほんの少しマシになったようにも思われる。