スーパーマーケットの持ち帰り用レジ袋を…
スーパーマーケットの持ち帰り用レジ袋を断って、自前の買い物袋で購入物を持ち帰る人が多くなった。その中で、時に風呂敷を取り出してせっせとくるむ人がいるのを見ると、うれしくなる。
1960年代までは生活の中でよく使われた風呂敷だったが、某有名デパートが手提げの紙袋を客に提供し始めてから影が薄くなった。しかし今日、地球環境保護意識の向上で紙袋やレジ袋の使用を避ける傾向が強まり、風呂敷再登場の兆しが見られる。
先日、風呂敷・和文化コンシェルジュのつつみ純子さんの「日本の心で世界を包む」という講演を聞いて、目から鱗(うろこ)だった。正倉院宝物を包む布が残存し、それが風呂敷の嚆矢(こうし)。江戸時代には色や包み方のバリエーションが流行ったという。
「当時流通した風呂敷には吉祥文様や判じ物の模様が柄に取り入れられており、庶民の教養レベルの高さがうかがえる。風呂敷はそんな文化伝承ツールでもある」とつつみさん。
四角い布は世界中にあるが、包むという行為に利用する国や民族は少ない。しかも「日本人は常に美しく包むことを心掛けている。その包み方にはものを大切にする心、相手に対する思いやりがにじみ出ている」。
「2020年東京五輪は風呂敷でおもてなし!」とも。確かに、布一枚に秘められた文化の力を示すことは、資源の乏しい技術立国の真骨頂をじんわり見せて強烈な印象を残すに違いない。