【上昇気流】モノが売れなくなっている


昨年の実質国内総生産(GDP)は前年比1・7%増で、3年ぶりのプラス成長であることが分かった。その一方、日本電機工業会(JEMA)が発表した同年の民生用電気機器の国内出荷額は6年ぶりにマイナスとなった。白物家電を含め、モノが売れなくなったと言われる。

その理由は幾つもあろうが、若者たちの消費動向を見ると、彼らにとっては自動車や住宅がステータスシンボルでなくなったこと、生活の中でブランド品に関心を向けなくなったことなどが挙げられる。

また地球温暖化対策が課題となり、環境への配慮が国民のうちに浸透し、持続可能な社会実現といった考え方がモノの買い控えにつながっている。東京の街中では自転車のシェアリングがあちこちで行われている。

さらに家族の変容で、高齢者の多くはこの先の被介護や経済的問題で不安を抱え、目先の消費財に対して特に興味を持たなくなった。そのため、高齢者の購買力が落ちていることも大きい

モノが売れないという現象は以前にも見られた。「日経流通新聞」の1995年8月の調査結果では、大都市圏でほぼ半分が「特に買いたいモノがない」としていた。当時、必要な物はほとんど所有しているという消費者の“飽和感”が原因だった。

それと比べ、今日は人々の生活信条の転換といった内的なことが背景にある。世界的な傾向のようだが今後、大量生産、大量消費の仕組みが劇的に変化するかもしれない。