【上昇気流】「閾値」を超えさせぬ防衛力整備


年明けから東京地方は割と穏やかな天気が続いており、調布市の多摩川土手を歩いていると「日脚伸ぶ」という言葉も思い浮かぶ。少しずつ日が長くなり、春が近くなっているのが感じられる。

台風19号の影響により、増水した多摩川=2019年10月12日午後、東京都大田区

ただこの時期、日中でもずいぶん体感温度に差が出ることがある。午後3時を過ぎ、急に陽が陰り始めたり川風が吹いてきて冷え込んだりするのでウオーキングの際の服装は要チェックだ。

その多摩川で今、国主導の治水対策プロジェクトが組まれ、河道掘削、堰(せき)対策、堤防整備など数㌔にわたり大掛かりな工事が続いている。砂利を運ぶトラックが往来し、河川敷では重機が作動している。

多摩川は、近年では2019年の台風19号で二子玉川(世田谷区)周辺が氾濫し住宅地が冠水した。1974年には堤防が決壊して19棟の家屋が崩壊・流出し、その悲劇はテレビドラマ「岸辺のアルバム」などでも取り上げられた。今日、気候変動による影響が大きな懸念材料だ。

今も市当局が用意した「氾濫時想定浸水4・5㍍」というステッカーが、土手から300㍍ほど離れた電柱に貼られ、住民に注意を喚起している。4・5㍍は住宅の2階床を大きく超える高さだ。

状況や現象が劇的に変化する分岐点を「閾値」という。先人たちは自然災害を繰り返し体験し克服してきたが、一方、外国による国土侵害は取り返しがつかない。危機管理に意を尽くし「閾値」を超えさせぬ防衛力整備を進めることが必須だ。