パラリンピックで教えられることが多い。…


 パラリンピックで教えられることが多い。提唱者グットマン医師の「失ったものを数えるな。残された機能を最大限に生かそう」。「経営の神様」松下幸之助翁の「ないものを嘆くな。あるものを活かせ」もパラ精神に通じると産経新聞は言う(25日付主張)。

 松下電器で直接指導を受けた谷口全平氏によれば、翁の思想の核心は「マイナスをプラスに変える」(『松下幸之助 運をひらく言葉』PHP文庫)。9歳で奉公に出、父母や兄弟を次々と亡くし天涯孤独。お金も学問も身寄りもなく、身体も弱い。そのマイナスの環境でも明るい肯定的精神で一大企業を興した。

 大相撲の解説者、舞の海秀平さんは現役時代、背が低く体も小さくハンディだらけだったが、逆にそれを生かして「技のデパート」の異名を取った。

 国もそうではないか。オランダはネーデルランド(低地)で洪水に苦しんだが、水を活(い)かして運河を巡らし、16世紀に寒村アムステルダムを一大商業港に発展させた。

 英国の産業革命は沼地と荒地だらけのヨークシャーやランカシャー地域から始まった。貧しい半農半工でモノが買えないから創意工夫を重ね、水力紡績機など「発明の連鎖」で近代を切り開いた。

 NHKネット版にスポーツライターの宮崎恵理さんが「パラアスリートの流儀」を綴(つづ)っている。トレーニングの方法から用具の調整、生活の規律に至るまで工夫の連鎖。彼らはマイナスをプラスに変える「人生の神様」だ。