日本列島は1週間以上、九州、西・東日本に…
日本列島は1週間以上、九州、西・東日本に前線が停滞し、断続的に激しい雨が降り続いている。佐賀県嬉野市では、11日の降り始めから1000㍉を超える大雨を記録した。
長崎県西海市の用水路で70歳代の女性2人が倒れているのが見つかり、死亡が確認された。長野県岡谷市で土石流が住宅を襲い、お盆でこの家を訪れていた親子3人が亡くなった。
世界でも多雨地帯であるモンスーンアジアの東端に位置する日本は、年平均1718㍉の降水量があり、これは世界平均の約2倍に相当する(1971年~2000年の平均値)。しかも日本の場合、降水量は季節ごとの変動が激しく梅雨期と台風期に集中している。
今回、列島に梅雨期に多く見られるような前線が長く留(とど)まり、そこに太平洋の大量の湿った暖かい空気が流れ込んで雨雲に発達した。8月としては異例の停滞する前線が大雨を呼び込んだわけだ。
和辻哲郎は「(モンスーンは)太陽が海の水を陸に運ぶ車にほかならぬ」(『風土』)と表現している。天然資源に乏しい日本には豊かな水こそ天恵の資源であるし、昔からこの水を生活に巧みに利用する努力を払ってきた。
その一方で日本人の心に無償の水資源への甘えが生まれ、知らないうちに水への畏怖感を見失ってきていると言えまいか。人口が多いのに狭い国土で、勾配が急な河川は少なくない。人口の一極集中の是正、危険な山や川べりの開発見直しは政治の大きな課題だ。