きょうの閉会式で東京五輪が終わる。祭りの…


 きょうの閉会式で東京五輪が終わる。祭りの終わりは寂しいものだが、今回は日本が金メダル、そしてメダル総数も過去最多を更新するなど最高に盛り上がった大会だったと振り返ることになろう。

 数々の名シーンが目に浮かぶ。特に、絶対王者だった体操男子の内村航平選手に代わって個人総合と種目別の鉄棒で金メダルを取った橋本大輝選手の活躍は目を見張るものがある。鉄棒の最後の着地は見事だった。

 「終わりよければすべてよし」という言葉がある。終わり方がよければそれまでのさまざまな問題が帳消しになるという意味だ。英国の文豪シェイクスピアの戯曲のタイトルからきている。

 シェイクスピアには名セリフが多い。これも人口に膾炙(かいしゃ)した名セリフだが、戯曲の方はそれほど有名な作品ではない。あまり知られていないのも、作品自体の問題などで上演が少なかったことがある。

 前回の1964年東京五輪を観戦した作家の三島由紀夫は、閉会式を日本的なセンチメンタリズムではなく「それは陽気な、解放と自由のお祭りになった。(略)人間的な祭典であった」(『三島由紀夫スポーツ論集』岩波文庫)として「別れもたのし」の祭典となったと述べている。

 秩序を持った式典に、各国の選手たちが無秩序に駆け込んできたからだった。「破調の美」と言っていいかもしれない。スポーツの祭典が終わった後は、新型コロナウイルスとの本格的な戦いが待っている。