東京五輪がきょう、いよいよ開幕する。新型…


 東京五輪がきょう、いよいよ開幕する。新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期され、その後も収束しないまま、緊急事態宣言下で無観客という五輪史上異例の開催となった。2013年9月のIOC(国際オリンピック委員会)総会で東京での開催が決定した時、誰がこんな事態を想像しただろう。

 きょうまで何かと躓(つまず)きが続いた。いったん決まった大会エンブレムの不採用、開幕直前まで続いた大会関係者の失言や過去の言動による相次ぐ辞任など、満身創痍(そうい)の感がある。

 再公募で選ばれた組市松紋の大会エンブレムは、色彩的にはシンプルだが、江戸の粋を表した日本らしいデザインだ。江戸時代の歌舞伎役者、佐野川市松が舞台で着ていた着物の柄が由来だという。ただ気になるのは、繊細な意匠であるため、下手に触るとすぐに崩れそうな危うい感じがすることだ。

 エンブレムは形でその大会を象徴する。前回の東京五輪(1964年)のエンブレムは日の丸を大きく表現し、まさに日出(い)ずる国の勢いを感じさせた。

 それから57年。今度はパンデミック下での開催となり、市松模様の白い部分がマスクの形に見えないでもない。先進国、経済大国となった日本に、世界的な困難解決の一端を担うことが求められているのだと捉えたい。

 大会は組市松紋を崩さないよう、特に感染対策などで注意深く運営する必要がある。選手や大会関係者を静かに、しかし熱く応援していきたい。