土石流の発生で大きな被害が出た静岡・熱海市…
土石流の発生で大きな被害が出た静岡・熱海市伊豆山のホテルに数年前に宿泊した時、急坂を上って何時間か散歩したことがある。山-谷の地形が海岸近くまで続き、上り下りが相当きつかった。
その時気付いたのは、常緑樹が生い茂って地面まで陽光が差し込まず、下草が生えない痩せた土壌が少なくなかったことだ。土壌の条件によって異なるが、間伐が進んだ森林地と比べ、保水能力は相当落ちていたのではないか。一昨日の土石流災害の激しさには驚きを禁じ得ない。
小紙4日付で専門家が「熱海周辺は火山性噴出物が積もっており、土中に多量の水分を含みやすかった」とコメントしている。大雨で土中に多量の水が貯(た)まったが、それを保つ力に乏しく、大量の土砂が最寄りの逢初川沿いを2、3度流れ下り、海岸まで一息だったということではないか。
以前はあまりなかったが、最近では1時間100㍉以上の集中豪雨も少なくないし、その事態を全国のどこででも経験する可能性が生まれている。伊豆山周辺では、土石流発生前の48時間の雨量が316㍉に及んだ。
<大雨+森林の保水能力の低下>が近年の梅雨期の豪雨災害を引き起こす主因であり、今回の土石流はその特徴をはっきり映し出していると言える。
日本は降った雨が短時間で河川を流れ下って海に入る所が多い。森林の荒廃が進むが、治山治水、豪雨対策に森林の保水機能を有効に生かすことを真剣に考えるべきだ。