革新的なヒット商品を次々と送り出してきたソニーが…


 革新的なヒット商品を次々と送り出してきたソニーが、業績不振にあえいでいる。過去5年間で黒字は2013年3月期だけ。

 ソニーは戦後、トランジスタ技術開発で名を馳せ、エサキダイオードの製作は特に有名だ。この世界的な発見を当時、大会社でもなく有名な研究所でもない新興企業の一つが行った。開発した技術の製品化もうまかった。

 昭和41(1966)年刊『ソニーは人を生かす』(日本経営出版会)で当時、重役だった小林茂さんは「ソニーがひじょうに優秀な会社として発展しつづけている理由は(中略)成長期にある若者の、未熟さと勇気と、エネルギー」と胸を張った。

 その開発拠点だった中央研究所が閉鎖されて約15年たつが、負の影響は大きい。当時の技術開発の花が半導体とすれば、今はナノ技術(原子、分子の操作技術)。情報や環境、バイオなどの分野で技術革新をもたらすものだが、その人材がソニーには育っていない。

 目先の利益を重視することより、人材をキープし育成する方向に舵(かじ)を切る時だ。先の『ソニーは人を生かす』に次のような一文がある。

 「(ソニーの方策進言のやり方について)アメリカの優秀会社で成功しているとか、偉い人がいっているとか、あるいは日本の多くの会社で成果を得ているとか、そういう形で自分の進言を権威づけることは(中略)ここではまったく通用しない」と。今こそ“独創”を。