梅雨や秋の大雨の時期に思い出すのは、以前…


 梅雨や秋の大雨の時期に思い出すのは、以前、東京・新宿区高田馬場に住んでいた時、神田川の水が毎年のようにあふれ、玄関口まで浸水したのをかき出すのに骨折ったこと。急速な市街化の影響で、雨水が地中に浸透せず川へ流れ込み、すぐに許容量を超えてしまった。

 近所の印刷所の主人が虎の子のドイツ製印刷機を守ろうと、背丈ほどの頑丈な板塀と1㍍ほどの土台を作り防戦したりした。2005年、かなり大きな水害が起き浚渫(しゅんせつ)工事などが行われ、何とか水害を免れている。

 先ごろ参院本会議で「改正特定都市河川浸水被害対策法」が可決、成立した。大雨による浸水リスクが高い河川沿いの地域を「浸水被害防止区域(レッドゾーン)」に指定し、住宅などの建築制限を行う。また、国や自治体、事業者、住民といった流域の関係者が一堂に会し、防災計画を策定する協議会創設も可能に。

 町ぐるみで地域を守ろうという取り組みの一環だが、楽観はできない。いったん町が出来上がってしまうと、災害防止のためと言っても、そこに手を入れるのは容易でない。

 地方は、かなりの年月をかけて町が成熟していったところが多い。川筋にあって居住の好適地に住宅が建ち、その周辺だけが密集したりしている。その環境を変えるのに、むしろ東京の市街地などより難しいこともあるだろう。

 異常気象を迎え撃つのに、防災の町として売り出すぐらいの意識改革、覚悟が必要かもしれない。