「渡り鳥折紙にある山と谷」。第4回新鋭…


 「渡り鳥折紙にある山と谷」。第4回新鋭俳句賞を受賞した渡部有紀子さんの「蟻眠る」の中の一句だ。この賞は俳人協会の主催で、50歳未満の人を対象に1人当たり30句の作品を募集し、その中から選ばれる。

 「俳句文学館」(2月5日付)に掲載された選考委員の一人、小島健さんの論評によると「健康な詩情があり、鋭い観察力もGood! 母への素直な情感もうれしいですね。安定感に秀で感性豊か。期待の作家です」。

 渡部さんは「天為」主宰だった故有馬朗人さんの門人で、師の教え「さぼらないこと」をかたくなに守り、努力してきたという。師のモチーフである西洋文化を取り入れて、独自の道を切り開いてきた。

 興味深いことに「受賞のことば」で「受賞作品は、小学校一年生の娘との生活の中で句材を得たものばかりです」と語る。引用した句の折り紙は、娘さんと一緒に楽しんだものであったことが分かる。

 子育て支援にも関わってきたという。「朝焼や桶の底打つ山羊の乳」という句は、牧場に子供と合宿に行った体験を連想させる。母と子の交流から生まれる視線は、新たな世界の発見だった。

 「狐火は女のまなざしと思ふ」という句さえ、娘さんと見に行ったクリムト展で、絵の中の女性たちから着想を得たそうだ。「今後も、子どもといることで得られる日常生活の驚きや発見を大切に」詠んでいきたいという。家族の心情文化は芸術の源泉となるようだ。