福島、宮城両県などを襲った今回の地震は…
福島、宮城両県などを襲った今回の地震は最大震度6強の揺れを観測し、福島県では大量の土砂が高速道路をふさいだり新幹線の架線を支える柱が傾いたりした。東北新幹線は不通だ。
一方これまでに死亡者が確認されていないのは、市民の間で地震に対する有形無形の備えが相当できていたからだと思う。
小紙16日付社会面の記事では、被災地の73歳男性が「震災で水が不足し、苦労したのでペットボトル入りの水を30本ほど備蓄していた」と。別の男性は「地震から断水までの1時間で浴槽いっぱいに水をためた」と証言している。10年前の経験が生きている。
東日本大震災では多くの人が命を奪われ、財産を失い、日々の生活を破壊された。数年前、筆者も福島県で取材をしたが、罹災者でなくても新築家屋の建て付けにかなり気を使っているのが分かった。避難先の確認などにも強く意識を持っている人が多かった。
これらの備えは、被害をできるだけ軽くする「減災」の考え方によるもので、それが実感的に身に付いて実践されている。今回、民家や公共施設で火事が起きていないのは、就寝中の人が多かったせいもあるが、「火の用心」「まさかの時に備える」という心構えの成果だと思う。
地震予知の研究も少しずつ進展し、緊急地震速報なども普及しつつあるが、現段階ではこれから起きる地震を正確に言い当てることは難しい。「減災」は全国民が優先して取り組むべき防災策だ。