元横綱栃ノ海の花田茂廣さんが亡くなった…
元横綱栃ノ海の花田茂廣さんが亡くなった。大鵬、柏戸の両横綱全盛のいわゆる柏鵬時代、身長177㌢、体重110㌔の小兵ながら、スピードと技で自分より大きな相手を打ち負かし人気を博した。存命の横綱経験者では最高齢の82歳だった。
昭和30年代の話だが、気流子が通っていた小学校では毎週月曜日の朝に全児童を集めて校長先生が講話を行った。その日の話題は「栃ノ海が大鵬に勝った」。普段は怖そうな顔の先生が、その時はにこやかな顔で話し始めたのを覚えている。
小さい力士でも、努力や工夫で大きくて強い力士に勝てる、君たちも頑張れというような話だった。ほとんど忘れた講話の中で、これだけははっきりと記憶に残っている。
これが、栃ノ海が関脇時代に初優勝した昭和37年の夏場所だったか、翌38年九州場所で優勝した時のことか、定かではない。しかしどちらも身長で10㌢、体重で40㌔大きい大鵬の懐に飛び込み食いついていく、闘志あふれる相撲だったことは確かだ。
同じく土俵でしのぎを削った柏戸も現役引退後のインタビューで「とにかく相撲が速い、うまい。どれだけ突っ張っても、下からおっつけられて、両差しになる感じ」とその取り口を振り返っている。
現役の大相撲力士を見ると、体格はいいのに、なぜか大関に上り詰めても綱に手が届かないという力士が多い。見ていて歯がゆさを覚えることが少なくない。昭和の名横綱の相撲から学ぶものは多い。